4:オルチャ渓谷の中に世界遺産のピエンツァの町が

 


 団体の皆さんはフィレンチェの街に出かけて、美術館を巡るようだ。

宗教画や裸の彫刻の西洋美術に興味のない我らは別行動でオルチャ渓谷に行く。

 

 渓谷と聞いて深い山に囲まれ、沢が流れ、滝の音や鳥のさえずりが聞こえる場所を想像していた。その間違えに気づいた時は丘の上にある古い城を見つけた時だった。

 

 低くなだらかな丘、糸杉の並木道、どこを見てもよく手入れされた公園の景色だ。

カレンダの風景写真がそこにあった。360度どこを向いても絵になる。



 ホテル周りを散策して戻ると既に上品なガイドさんと黒いベンツのワゴン車が待っていた。まだ800kmしか走っていない新車だった。

 

 クロ革のしっとりしたシートに収まっていざ出発、冷房のないバスとは大違いだ。

南に向けて高速道路を進み、一般道路に入ると道はオリーブやブドウ畑を抜ける急な カーブと丘を上り下りした。この道はローマ時代の街道だったらしい。

 

 交差点に信号は無くロータリー式で、左から来る車のスキを見てはサーと合流する方式だ。気が弱いといつまでもロータリーには入れないし、入ったらそこから抜けられないだろうな。



 背が低くて垣根のようなブドウの木が続き、摘み取りには大勢の人が集まり作業をするらしい。

 綺麗に植えられているので機械で刈り取りしているのでは、と尋ねると「季節労働者がひと房ずつ手で摘まないと、美味しいワインが出来ないそうです。」とガイドさんの回答だった。

 枝を下に垂らしたオリーブの木も植えられていた。実を採るのに都合が良い樹形だが、これは機械で木を揺すり、落ちた実を集めているのか、それとも手で摘み取っているのか。



 ユネスコの世界遺産地帯のVal d'Orcia「オルチャ渓谷」にやってきた。

風の流れに似たなだらかな丘陵は緑の牧草に覆われ、糸杉は丘を飾り、並木になって農家を巡り、オリーブやブドウの木と一緒に遠くかすむ山裾に続いていた。

 ここは700年かけて農民達によって造られた理想郷だった。それまでは不毛の地であった。

 この景観を大切に守り続けて、今でも屋根瓦や窓の材質、壁の色まで規制されているようだ。 しかし残念なのはテレビのアンテナは無くせなかったらしい。

 

 ここは世界遺産に登録された小さな田舎町ピエンツァだ。

小高い丘にレンガ色の中世の城と石造りの町は緑の海に浮かんでいるようだ。見上げると真っ青な空だ。

 狭い石畳の急な坂道の両側に小さな土産屋が並び、奥に細長い塔が立ち、Picccolomini広場があり、1459年頃に造られた。

 

 オルチャ渓谷が一望できる場所に案内された。広大で息をのむ美しさが足元に広がっていた。



 となりの丘に移動したモンタルチーノだ。

 

 ここで有名なイタリアワインの女王とペッコリーノチーズを買い求めた。ホテルに戻りチーズを食べて高級ワインを飲みたいが帰国してじっくりと味わうことにした。

 

 昼食は町の中心部だろうか、わき道の突き当たりの小さなお店で、日差しが降り注ぐ屋外の小さなテーブルで、お勧めのワインで小分け料理を味わう。



 観光バスでは入れない狭い路地を登り、Firenceの中心街が一望できる丘に出た。旅行写真で掲載される見慣れた景色がそこにあった。古代の町並が保存されているのだ。

 

 人混みのするVecchio橋の近くまで車で行けたが、特別の許可が無いと車は入れない場所だ。黒ベンツだからかな。

 

 Uffizi美術館はストで休館すると情報があったが、すごい人混みだ。美術館のBotticelliの絵は日本の渋谷に貸し出されているとかで、帰国したら観に行こう。



 広場に出て、ガイドさんが水を得たように懸命に説明しだした。「ここは京都と姉妹都市です。」そこにスーと警官が来て様子をうかがい始め、観光ガイドが許可章をぶら下げると、立ち去っていった。イタリアはガイドの国家資格が必要だとか。

 

 Vecchio宮殿の大広間に驚き、ぐるぐると部屋を巡り、地下の発掘現場まで見学できたが。天井画を見るので首が痛くなる。